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福岡高等裁判所 平成元年(ネ)641号 判決 1991年3月14日

控訴人・附帯被控訴人

日本国有鉄道清算事業団

(以下「控訴人」という。)

(旧名称・日本国有鉄道)

右代表者理事長

石月昭二

右訴訟代理人弁護士

杉田邦彦

右指定代理人

荒上征彦

利光寛

滝口富夫

増元明良

内田勝義

松尾年明

被控訴人・附帯控訴人(以下「被控訴人」という。)

坂井東大

右訴訟代理人弁護士

石井将

右当事者間の労働契約存在確認等請求控訴事件、同附帯控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  本件附帯控訴に基づき原判決主文第二、三項を次のとおり変更する。

1  控訴人は被控訴人に対し金一二八四万九〇五八円及び平成二年一月一日から本判決確定日まで毎月二〇日限り一か月金二三万四九〇〇円の割合による金員を支払え。

2  被控訴人のその余の請求を棄却する。

三  当審における訴訟費用は控訴人の負担とする。

四  本判決主文第二項、1は仮に執行することができる。ただし、控訴人が担保として金六〇〇万円を供するときは、右仮執行を免れることができる。

事実

第一  当事者の求める裁判

一  控訴の趣旨(控訴人)

原判決を取り消す。

被控訴人の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁(被控訴人)

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

三  附帯控訴の趣旨(被控訴人)

原判決主文第二、三項を次のとおり変更する。

控訴人は被控訴人に対し一三三八万四三九八円及び平成二年一月一日から毎月二〇日限り一か月二五万一〇〇〇円の割合による金員を支払え(昭和六一年九月二日から毎月二〇日限り一か月二四万二六一〇円の割合による金員の支払を超える分は当審において請求を拡張)。

前項につき仮執行の宣言

四  附帯控訴の趣旨に対する答弁(控訴人)

本件附帯控訴を棄却する。

被控訴人が当審で拡張した請求を棄却する。

第二  主張の関係は、次のとおり改めるほか、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する(ただし、昭和六二年三月三一日以前の「被告」は控訴人の旧名称である「日本国有鉄道」を意味する。)

一  原判決三枚目裏七行目冒頭(本誌五四七号<以下同じ>21頁2段3行目)から一〇行目末尾(21頁2段10行目)までを次のとおり改める。

「(一) 本件処分は無効であり、控訴人と被控訴人間には労働契約関係が存するので、被控訴人は控訴人に対し毎月二〇日限り当月分の賃金のほか、夏季、年末、年度末の各手当の支払請求権を有する。

(二) 被控訴人が本件処分を受けた昭和六一年九月一日から平成元年一二月末日までの一か月当たりの賃金及び夏季、年末、年度末の各手当額は、別表(1)(略)のとおりであり、その総合計は一三四一万三七二四円となる。

(三) 被控訴人はこのうち、昭和六一年度のベースアップ差額分二万一五〇〇円及び夏季手当差額分七八二六円を受領している。」

二  四枚目表初行の「昭和」(21頁2段14行目)から二行目の「二四万二六一〇円の」(21頁2段15~16行目)までを「右一三四一万三七四二円から右受領分を差し引いた一三三八万四三九八円及び平成二年一月一日以降毎月二〇日限り一か月二五万一〇〇〇円の割合による」と改める。

三  同枚目裏二行目の「同」(21頁3段1行目)から八行目末尾(21頁3段13行目)までを次のとおり改める。

「(1) 同3(一)は争う。

(2) 同(二)の事実は否認する。

被控訴人は、過去の賃金について事業団本来の業務(日本国有鉄道清算事業団法(以下「事業団法」という。)二六条一項)に従事する職員と同様に、本件処分当時支給されていた基準内賃金(基本給+扶養手当)に各年度の定期昇給、ベースアップ、扶養手当の増加分を加算したものを計算の基礎としているが、昭和六二年四月一日以降、被控訴人が当然に事業団本来の業務に従事する職員となったかどうかは明らかでなく、事業団の臨時業務である日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法に基づく再就職促進業務(事業団法二六条三項)に従事する職員となる可能性も十分にあった。仮に後者の職員とすれば、その賃金について昇給、昇格は実施されず、昭和六二年度ないし平成元年度の夏季、年末、年度末の各手当の支給率は、それぞれ右基準内賃金の一・五か月分、二・一か月分、〇・二か月分である。

さらに、右本来の職員についても昇給は常に当然に四号俸ということではなく、勤務成績を評価して昇給号俸の増減がされることになっており、また、期末手当については、昭和六一年度夏季手当以降、労使間の協定により日常の勤務成績に応じて五パーセント増減できることとしたので、勤務成績の査定を受けていない被控訴人が当然にその支給率そのままの額の手当を受けられることにはならない。ちなみに、昭和四六年度以降の被控訴人の定期昇給の実態は、昭和四六年四月期一号俸減、昭和五一年四月期一号俸減、昭和五二年四月期一号俸減、昭和五四年四月期一号俸減、昭和五八年四月期一号俸減、昭和六〇年四月期一号俸減、昭和六一年四月期三号俸減となっており、さらに、被控訴人は刑事事件に関し起訴されたため昭和四七年一月二七日付けで休職となり、昭和五〇年二月復職するまで休職期間中は全く昇給せず、復職時においても昇給は二号俸減となっており、昭和六一年夏季手当についても被控訴人は五パーセントの減額支給となっている。

したがって、被控訴人の本件賃金請求は失当であり、仮に本件処分が無効であったとした場合の賃金は、いわゆる再就職促進業務に従事する職員として別表(2)(略)のとおり算定されるべきである。

仮に別表(1)のとおりに算定した場合でも、請求原因3、(3)のほか、昭和六一年九月一日分に相当する八四四五円も支払われており、さらに、平成元年度追加特別手当は平成二年一月一九日支給であるから、同手当五万〇二〇〇円分も被控訴人の請求金額から差し引かれるべきである。」

第三  証拠の関係は、原審並びに当審記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する(略)。

理由

一  当裁判所も、本訴請求のうち、被控訴人が控訴人に対し労働契約上の地位にあることの確認を求める部分は理由があると判断する。その理由は、次のとおり加除し、改めるほか、原判決(三二枚目表八行目(30頁3段17行目)から六五枚目表二行目まで(41頁3段14行目))の示すとおりであるからこれを引用する(ただし、昭和六二年三月三一日以前の「被告」は控訴人の旧名称である「日本国有鉄道」を意味する。)。

1  原判決三三枚目表四行目冒頭(30頁4段20行目の(証拠略))に「前記当事者間に争いのない事実に、」を、五行目末尾に(30頁4段20行目の(証拠略))「第三三号証及び」を、七行目の「甲第三九号証」(30頁4段20行目の(証拠略))の次に「、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第三四号証」を加え、八行目の「真正に成立したものと」(30頁4段20行目の(証拠略))を「原本の存在及びその真正な成立が」と改め、九行目の「鉄屋幸男」(30頁4段20行目の(証拠略))の次に「、同重野征太」を、一〇行目の「春美」(30頁4段20行目の(証拠略))の次に「、同西村照次(当審)」を加える。

2  同枚目裏六行目の「適性化」(31頁1段3行目)を「適正化」と改める。

3  三四枚目裏一〇行目の「管理」(31頁2段25行目)を「監理」と改める。

4  三五枚目裏九行目冒頭から一〇行目の「労働組合」(31頁4段3行目の「同年」から同頁同段8行目)までを「鉄労、動労、全施労」と、末行から三六枚目表初行にかけての「破棄され」(31頁4段11行目)を「期限切れとなり」と改める。

5  三六枚目表二行目の「破棄された後」(31頁4段14行目~15行目)を「期限切れとなった後」と、四行目の「一方的に」(31頁4段18行目)を「法的保護に値しないものとの判断で」と改める。

6  同枚目裏五行目の「対立し、」(32頁1段13行目)の次に「管理職は現認と称して同組合員の言動を逐一メモし、これに対し」を加える。

7  三八枚目表六行目「甲第七号証の五」(32頁3段18行目)の次に「、六」を加え、七行目の「(但し、後記措信しない部分は除く。)」(32頁3段19~20行目)を削るほか、以下の同趣旨の括弧内(括弧を含む。)(32頁3段22行目の(証拠略))をいずれも削り、八行目の「第六号証」の次に(32頁3段22行目の(証拠略))「、第七号証の一ないし四及び乙第七号証」を、九行目の「西依正博」(32頁3段22行目の(証拠略))の次に「(原審)」を加え、一〇行目の「及び第七号証」(32頁3段22行目)を削る。

8  同枚目裏初行の「第一八号証」(32頁3段22行目の(証拠略))の次に「(第一八号証は原本の存在とも)」を二行目の「西依正博」(32頁3段22行目の(証拠略))の次に「(原審)」を、同行目の「田口大策」(32頁3段22行目の(証拠略))の次に「、同西村照次(当審)」を加え、四行目の「甲第二号証」から五行目末尾まで(32頁3段22行目の(証拠略)から同頁同段24行目)を「右掲記中の証拠部分は採用しない。」と改め、七行目の「構内指導係」(32頁3段27行目)の次に「(列車車両の入替えの際に車両の連結、解放、ポイントの取扱を主な担当業務とする。)」を、八行目の「アングルコック」(32頁3段29~30行目)の次に「(列車は、機関車から最後尾の車両までを圧力空気でブレーキの操作をするようになっており、そのためにゴム製のエアホースが、連結器の横で車両と車両を繋いでいる。右エアホースと車両の繋ぎ目部分にあって、空気を止めたり流したりする操作部分のことをアングルコックという。)」を、九行目の「漏れている」(32頁3段31行目)の次に「(そのため、圧力空気がそこから漏れてブレーキが効かない状態になった。)」を、末行の「調査で、」(32頁4段4行目)の次に「事故担当者は」を加え、同行末尾(32頁4段6行目の「連結」)に「(機関車で車両を移動させるときに勢いをつけて連結部分を切り離し、慣性で動いていく車両をそのままブレーキ担当の職員が適当な速度に緩めて当該車両から飛び降りてひとりでに車両を流し、留置されていた車両に連結する方法)」を加える。

9  三九枚目表初行の「判明した。そこで、右長崎管理部の事故担当者が」(32頁4段6行目から7行目)までを「判断した。これに対し訴外瀬崎と同じ第二運転室に勤務する国労組合員である被控訴人らは、右事故は訴外瀬崎の作業の前後に起きた可能性があり、仮に、同人の作業時に起きたとしても、通常どおりの作業をしていて起こったのであり、しかも、現場協議制が無協約状態となった後、控訴人長崎駅当局によって作成された運転作業内規そのものが必ずしも明確ではないとして、訴外瀬崎のミスによるものではないと判断していた。しかし、右長崎管理部の事故担当者は」と改め、二行目の「同月一七日」(32頁4段8行目)の次に「必ずしも納得しきっていなかった」を、六行目(32頁4段17行目)の次に改行して「なお、当時の長崎駅には西村照次駅長以下管理職一四名、一般職員約一一五名がいた。職場は、庶務、出札、改札、貨物、運転の五部門に分かれ、各職場に助役が配置され、運転部門関係は更に、第一運転室(列車の出発、到着関係の管理を主体にし、ホーム上に職場があり、約六名の一般職員が所属する。)と、第二運転室(列車の入替え業務を主体にする約三〇名の一般職員と四名の管理者が所属し、駅構内に主たる職場がある。)とに分かれていた。運転部門の管理者は、第二運転室に隣接する輸送本部につめていた。」を、七行目の「首席助役」(32頁4段18行目)の次に「(長崎駅業務全般の管理運営について、駅長の補佐、代理を務める。)」を、同行目の「庶務助役」(32頁4段19行目)の次に「(主に職員の人事関係、労務関係について、駅長の補佐を務める。)」を、九行目の「輸送総括助役」(32頁4段23行目)の次に「(運転関係の仕事について、駅長の補佐を務める。)」を加える。

10  同枚目裏二行目の「そのまま」(32頁4段31行目)の次に「第二運転室」を、九行目の「原告」(33頁1段14行目)の次に「(当時、長崎駅全体で一般職員中一、二名を除き国労組合員で、被控訴人、訴外瀬崎らを含め第二運転室所属の一般職員は全国国労に所属していた。)」を加える。

11  四〇枚目表五行目の「同日」(33頁1段27行目)を削る。

12  同枚目裏七行目の「言った」(33頁2段21行目)から八行目の「しかし」(同頁同段23行目)までを「言い、引き続き」と改め、同行目の「これにかまわず、」(33頁2段23行目)及び末行の「始め」(33頁2段29行目)から四一枚目表初行の「読み上げ」(33頁2段末行末字から3段始めの「み上げ、」まで)までを削る。

13  四一枚目表四行目の先の「「」(33頁3段6行目の「「」)から末行の「言うなど」(33頁3段20行目)までを「この処分を不当と考え、その取消しを求めて大声で抗議する被控訴人、訴外瀬崎ら数名の組合員と、事故の原因調査と対策等については具体的に関与しなかったため、詳細を知らないまま抗議を無視する同助役らの間で」と改める。

14  同枚目裏四行目の「昭和六一年四月二六日」(33頁3段27~28行目)を削り、六行目の「「」(33頁3段31行目の「「」)から八行目の「そこで」(33頁4段5行目)までを「被控訴人らはこもごも、ホース破損はどこで生じたのか、訓告書にある規定どおりの作業とはどういうことか、規定どおりの作業の指導をしてきたのか、何で訴外瀬崎が処分されなければならないのか等を大声で問い、抗議したが、事故の原因調査について具体的に知らされていなかった同助役らは、これらに一切取り合わないで」と、末行の「退去を命じたが、」(33頁4段11行目)から四二枚目表末行の「しかし」までを「退去を命じた。この間約一〇分双方の緊迫した言葉のやりとりがあったが、埒が明かないので」と改める。

15  四三枚目表三行目の「しかし」(34頁1段30行目)から八行目の「もっとも、」(34頁2段7行目)までを「しかも、控訴人長崎駅当局と異なり、右事故原因は訴外瀬崎にないとの見解をもっていた被控訴人らは、訴外瀬崎に対する処分通告をした鉄屋(首席助役)、西依(庶務助役)、田口(輸送総括助役)の三助役に事故原因、処分理由を問い正(ママ)しても、これに一切取り合ってもらえず(もっとも、これを具体的に知らされていなかった同人らであったから応答できなかったのであるが。)、また、同人らは被控訴人らの納得を得る対応を取ろうともしなかったのである。」と、八行目の「につき」(34頁2段8行目)から九行目の「与えられず、」(34頁2段9行目)までを「についての処分理由に納得しておらず、したがって、右処分通告をした鉄屋首席助役ら」と改め、一〇行目の「原告らの言動」(34頁2段12行目)の次に「中には、管理職に対する言葉使いとしては節度を欠き、眉をひそめるような部分があったことは推測できるのであるが、それら」を加え、末行の「にも」(34頁2段14行目)から同枚目裏初行末尾(34頁2段15行目)までを「はできない。」と改める。

16  同枚目裏三行目の「前掲」(34頁2段17行目の(略))の次に「甲第二証、」を、同行目の「重野征太の証言により」(34頁2段17行目の(略))の次に「真正に成立したものと認められる甲第八号証及び」を加え、五行目の「乙第五号証、第八号証」(34頁2段17行目の(略))を削り、六行目の「第一五号証」(34頁2段17行目の(略))の次に「弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第九号証、第二六号証、第二七号証、乙第五号証、第八号証」を、同行目の「西依正博」(34頁2段17行目の(略))の次に「(原審・当審)」を加え、八行目末尾の「証」(34頁2段20行目の「証」)から一〇行目末尾まで(34頁2段23行目)を「右掲記中の証拠部分は採用しない。」と改め、末行の「裏ダイヤ」(34頁2段25行目)の次に「(控訴人においては、平常時における作業手順、作業時間等を基準化した一種の時間割りとしての作業ダイヤを作成し、職員に周知徹底するとともに作業場などに提出しているが、これとは別に、職員において、作業時間を短くし、手待時間(次の作業を準備するための時間)や休憩時間を増やしたいわゆる裏作業ダイヤのこと。)」を加える。

17  四四枚目表初行の「事故が発生したため」(34頁2段26行目)を「事故(本来二人でやるべき作業を一人でしたために起こった荷一〇三七列車のヒーターホース破損事故)が発生したとの判断のもとに」と、四行目の「定められた。そして、同月七日も」(34頁3段2行目)を「定められ、同月四日、長崎駅長名で『環境整備について』と題する掲示を貼り出したが、それは、五月六日までに詰所階段突き当たりの木製の担当箱、ロッカー上等のボール箱、ロッカー室入口の押し入れの品物、風呂場入口タオル掛け側の化粧箱、油倉庫横のコンテナの中の私物等を整理撤去しない場合は駅長が整理撤去すること、構内詰所の鉄道電話及び公衆電話は数日中に撤去すること、ロッカー室の下駄箱は五月六日午後をもって使用を禁止すること、下駄箱及びロッカーは各自氏名の箇所を使用すること等を内容としていた。被控訴人らは、長年月をかけて職場要求として獲得してきたものを一方的に奪い去られることに反対したが無視された。そこで、被控訴人らは同月六日、当局の挑発に乗らない、手待時間を利用しての業務命令であれば従う、健康上、衛生上最低限必要な物は撤去・配置替えに応じない、作業する上で必要な安全対策等について質問する等の対応策で対処することとした。翌七日、午前中から」と、六行目の「構内詰所」(34頁3段5行目)を「第二運転室構内詰所(管理職を除いた運転従事者が日常的に食事あるいは待機場所として使用する場所)」と改め、九行目の「管理者」(34頁3段11行目)の次に「五、六名」を、同行目の「原告が」(34頁3段12行目)の次に「右」を加える。

18  同枚目裏五行目冒頭(34頁3段25行目の「山口」)から四五枚目表末行末尾(34頁4段7行目の「言動を」)までを「『二階に上がったぞ。』と言いながら被控訴人の後を追い、更にその後を山口一敏助役ら数名が追い、二階を見(ママ)分している被控訴人に付きまとい、『勤務時間外の者が勝手に詰所内に入ってはいかん。』という趣旨のことを言い続ける鉄屋首席助役に被控訴人は言葉激しく反発しながら見(ママ)分を終えた。同助役らの言動に立腹していた被控訴人は、右詰所前広場に出た後、同助役との間で激しい言葉の詰り合いをする中で、一瞬同助役の左胸の襟を掴んで引っ張り、同助役がこれを制止することもあった後、被控訴人は午後一〇時一六分ころ、同所を立ち去った。」と改める。

19  四五枚目裏初行の「原告」(34頁4段29行目)から八行目の「原告の」(35頁1段10行目)までを「右認定に反する右掲記中の証拠部分は採用しない。しかし、右認定の、被控訴人が」と改める。

20  四六枚目表初行の「数人」(35頁1段18行目)を「五、六名」と改め、三行目の「証言」(35頁1段23行目)の次に「及び乙第二号証の記載部分」を、四行目末尾(35頁1段24行目)に「もっとも、被控訴人の右行為は、その動機に酌むべき点があったにしても、上司に対してとるべき態度とはいえず、まして、国労の長崎駅連合区分会執行委員長という要職にあった者としては軽率であったものと言わざるを得ない。」を加え、五行目冒頭から七行目末尾(35頁1段25行目から同頁同段31行目)までを削り、末行の「甲第二号証」(35頁2段4~5行目の(証拠略))の次に「、第七号証の六」を加える。

21  同枚目裏二行目の「西依正博」(35頁2段4~5行目の(証拠略))の次に「(原審)」を、三行目の「右証言」の次に「(原審・当審)」(前に同じ)を加え、五行目の「甲第二号証」(前に同じ)から七行目末尾(35頁2段7行目)までを「右掲記中の証拠部分は採用しない。」と改める。

22  四七枚目表六行目の「第二転てつ詰所」(35頁2段26行目)の次に「(駅ホーム上にある作業待機場所であり、客転詰所ともいう。)」を加え、末行の「雑然と置いてあった」(35頁3段3行目から4行目)を「置いてあったが、同助役の目には、雑然と置いてあるように映った」と改める。

23  同枚目裏一〇行目の「大声で」(35頁3段24行目)から四八枚目表八行目の「そして」(35頁4段11行目)までを「左手で、機関紙を持っていた同助役の右手首を掴み、その返還を強く求め、これを拒否して掴まれた右手首を振り解こうとする同助役と一瞬揉み合いになったが」と改める。

24  四九枚目裏三行目の「にしても」(36頁2段1行目)から七行目末尾(36頁2段9行目)までを「のである。ところで、職場にいかなる私物を持ち込むかは、本来各人が、当該職種との関係で判断できる性質のものである。仮に、職場に持ち込める私物の判断に労使の間に意見の相違がでてきたときは、労使で先ず協議をするべきであって、これをしないで、一方の見解を強要するが如きは、近代的な労使関係を築くことに背くものというべきである。そして、勤務時間中に組合活動をしている等の特段の事情がないのに、管理職が、職場から組合機関紙の撤去を強行する権利があるかどうか疑問であることに思いを致すとき、西依助役の前記言動は、要職にある管者の行動としては穏当を欠くものということができる。」と改める。

25  五〇枚目裏一〇行目の「乙第一号証」(36頁3段28行目の(証拠略))から五一枚目表三行目末尾(36頁4段1行目)までを「甲第二号証、乙第一、二号証、原審証人重野征太の証言により真正に成立したものと認められる甲第一一号証、第二八号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一二号証、第二九号証並びに原審証人鉄屋幸男、同重野征太、原審・当審証人西依正博の各証言によると次のとおり認められ、これに反する右掲記中の証拠部分は採用しない。」と改める。

26  五一枚目表五行目の「右詰所横の食堂」(36頁4段5行目)を「右詰所横にある第二運転室食堂(食堂とは通称であり、一般職員が食事をとるときのみならず、休憩、待機、手待時間のときにも利用する場所である。)」と、七行目の「雑然と置いてあった」(36頁4段9行目)を「置いてあったが、同助役らの目には、雑然と置いてあるように映った」と改める。

27  同枚目裏六行目の「「」(36頁4段13行目の「「」)から五二枚目表五行目末尾(37頁1段18行目)までを「私物を勝手に開けようとする鉄屋首席助役に、大声で『泥棒みたいな真似をするな、いいかげんにしてくれ。』という趣旨の言葉を使って激しく抗議し、詰め寄り、『泥棒とは何だ。』という趣旨の言葉で被控訴人をたしなめる同助役らとの間で数分間にわたって緊迫したやりとりがあった。」と改める。

28  五二枚目表九行目冒頭(37頁1段24行目)から五三枚目裏三行目末尾(37頁3段18行目)までを削り、四行目の「(三)」(37頁3段19行目)を「(二)」と改める。

29  五四枚目表二行目の「許されて然るべきもの」(37頁4段8行目)を「許されるもの」と改める。

30  同枚目裏初行の「前掲」(37頁4段26行目の(証拠略))の次に「甲第二号証」を加え、二行目の「甲第一三号証」(前に同じ)の次に「、原審における被控訴人本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一六号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一四、一五号証、第三〇号証」を、三行目の「西依正博」(前に同じ)の次に「(原審)」を、五行目の「正博」(前に同じ)の次に「(原審・当審)」を加え、六行目の「認められ」(37頁4段28行目)から八行目末尾(38頁1段1行目)までを「認められ、これに反する右掲記中の証拠部分は採用しない。」と改める。

31  五五枚目表初行の「棚には」(38頁1段8行目)の次に「組合関係書類と思われる大型」を、五行目の「食堂内には」(38頁1段16行目)の次に「一一時ころから一三時三〇分ころまで設定されている昼食時間(そのうちの四〇ないし六〇分間を職員は幾つかのグループに分かれてとることになる。)を利用して」を加える。

32  同枚目裏五行目の「原告が」(38頁2段8行目)の次に「同助役の態度をわざとらしく、執拗なものと感じて」を、六行目の「訴外」(38頁2段10行目)の次に「敷根、同」を加え、七行目の「言った」(38頁2段12行目)を「言い、国労組合員の私物を勝手に開けるばかりか、昼食時間の者もいる時間帯に来て執拗に整理を強要したりする態度に腹を立てて抗議の声を挙げた」と、八行目の「らの言うこと」(38頁2段13行目から14行目)を「が勝手に私物を開けないで欲しいと要求したこと」と改め、末行冒頭の「かれた」(38頁2段18行目末字の「か」から19行目冒頭の「れた」)の次に「私物の」を加える。

33  五六枚目表二行目から三行目にかけての「西依助役は」(38頁2段24行目)を「高木助役は黙ってメモをとり続け、西依助役は『総点検の日になっているからここで何をしようと勝手じゃないか。現にお前は飯を食っているではないか。食いよればよかたい。』という趣旨のことを言った後、」と改め、八行目の「いきなり立ち上がり」(38頁3段4行目)を削る。

34  同枚目裏五行目の「血相を変えて」(38頁3段20行目)から七行目の「押した」(38頁3段25行目)までを「西依助役の言動に業を煮やし、早く出ていくように言って同人に詰め寄ったので、同人の左側にいた田口助役が間に割って入り、一瞬揉み合いになり、西依助役の胸を押した恰好になった」と改め、末行冒頭(38頁3段31行目の「言」)に「い、高木助役に向かって『一二時四八分暴力を受けたと書いておかんといかんね。』という趣旨のことを言」を加える。

35  五七枚目表三行目の「呼応して」(38頁4段7行目)の次に「『何が暴力や。自分で寝転んでおいてでたらめ言うな。』等と」を加える。

36  五八枚目裏初行の「あること」(39頁2段3行目)を「あり、かつ、前掲乙第一六号証の一、二、甲第一三号証、証人西依正博の証言によれば、西依助役の右後方約一メートルの地点にあるごみ箱の付近にではなく、同助役の左後方約一メートルの地点に右殻が落ちていたと認められること」と改める。

37  六〇枚目表四行目の「右」(39頁4段13行目)から七行目末尾(39頁4段19行目)までを「いずれも、本件処分通知書(前掲甲第一号証)の懲戒処分事由書欄に記載された一七号の懲戒事由に該当するものというべきである(なお、控訴人は懲戒事由として、本訴において、右一七号のほか三号、一五号をも主張するが、控訴人主張の被控訴人の各非違行為につき、どの行為が上司のいかなる命令に違反し、またはいかなる職務上の規律に違反しているかを具体的に主張しないし、かつ、本件においては、右一七号の懲戒事由該当の有無とその効力を検討することで必要にして十分と解されるので、三号、一五号該当の有無についての具体的検討は行わない。)」と改める。

38  同枚目裏七行目の「以上のように」(40頁1段11行目)を「そして、」と改め、八行目の「である被告総裁」(40頁1段12~13行目)を削る。

39  六一枚目表末行から同枚目裏初行にかけての「による抗議であり、また」(40頁2段8行目)を「を含む抗議であるが、同人に対する処分理由となった事故原因に対する判断の相違があり、その理由の説明を求める被控訴人らの言動にもそれなりの言い分があると解され、前記のとおり、右抗議は、職場の混乱のみを意図したものとは解されないのである。次に、」と改める。

40  同枚目裏四行目の「しかし、」(40頁2段15行目)の次に「それも、休みであったとはいえ、自分らの職場で強行された模様替えの実態を見分しようとする被控訴人(別に、鉄屋首席助役らの業務を妨害したわけではない。)と右見(ママ)分を妨害しようとして被控訴人の後に付きまとい続けた鉄屋首席助役との間で約四、五分にわたって激しい言葉の詰り合いをしたあげく、管理職五、六名の見ている広場で、瞬間のこととして起こった出来事であって、しかも、その程度は軽いものであったと推測される。次に、」を加え、九行目の「その胸を押して暴行を加えた」(40頁2段26~27行目)を「引き続き、同人に詰め寄ったので、同人の左側にいた田口助役が間に割って入り、一瞬揉み合いになり、西依助役の胸を押した恰好になった」と改める。

41  六三枚目表三行目の「べきである。」(40頁4段19行目)の次に「職場規律はおよそ組織体が円滑に運営されていくための基盤であることは、前記国鉄再建監理委員会の緊急提言の指摘を待つまでもないが、その真の確立のためには、管理者側の説得力に富み、ねばり強い、節度のある言動もまた要求されるところである。」を、四行目の「なした」(40頁4段21行目)の次に「罵声、」を加え、五行目の「の各」(40頁4段25行目)を「一〇一条一七号の」と改める。

42  同枚目裏七行目の「の各懲戒事由該当の各」(41頁1段19行目)を「一〇一条一七号の懲戒事由該当の」と改める。

43  六四枚目表初行の「鋭く対立していた」(41頁1段30行目)を「鋭く対立し、一般職員が新会社に移れるかどうか職場全体に不安が起こっていた」と改め、二行目の「原告らに対する」(41頁1段31行目から2段1行目)の次に「本件処分の遠因をなした」を加え、三行目の「のありようも」(41頁1段1行目)を「についていえば、六月二日の分は、西依助役が被控訴人らに対し、被控訴人らの職場である第二転てつ詰所内に置いてあった週刊誌、新聞紙等の整理整頓と組合機関紙の撤去を求めたことに端を発し、同月三日の分は、鉄屋首席助役が訴外重野に対し、その職場である第二運転室食堂内の机の上に置いてあった鞄、紙袋等の整理整頓を求めて、同人の私物の紙袋を覗き込み、あたかも私物を検査するかのような態度をとったことに端を発し、七月一日の分は、西依助役が被控訴人らに対し、右第二転てつ詰所内に置いてあった組合関係書類と思われる大型封筒二通と原稿用紙一冊の撤去と右食堂内の机の上に置いてあった『国労』『団結』『分割民営化反対』等と書かれた弁当箱や飲み残しのジュース類の整理整頓と組合関係書類がはみ出していた鞄の撤去を求めたことに端を発しているのである。職場にどのような私物を持ち込み、置くのが相当かということは、他人に迷惑を及ぼし、ひいては他人の職務専念義務をも損ないかねないとか、企業秩序を乱すおそれがある等の特段の事情がない限り、職場環境を快適に維持するために本来各人が良識をもって自主的、自発的態度を持って判断し、行動すべき事柄であって、職場規律の確立という組織の根幹に触れる問題として職場の上司と部下職員、業務命令という関係を前面に押し出しての問題解決になじむものであるかどうかは疑問であると解されるところ、本件全証拠によるも右特段の事情を認めるに足りないこと、憲法が思想、表現の自由を保証している趣旨からして、国労組合員らが職場に置いている『国労』『団結』『分割民営化反対』等と書いた私物の弁当箱等の排除を求めうるかどうか、また、単に組合機関紙を職場に置いているにすぎないのに(勤務時間中に組合活動をしているものとまではいえない。)、右特段の事情なくして助役にその撤去を強行する権利があるかどうかはいずれも疑問であり、さらに、原則として所持品検査はできないのに、あたかもこれができるかのように私物の紙袋を手元に引き寄せて覗き込み、私物を検査しようとした六月三日の鉄屋首席助役の態度は、節度を超え、管理職として軽率であること等を考慮すると、右点検が」と改め、五行目の「乙第二号証」(41頁2段5行目の(証拠略))の次に「、成立に争いのない乙第三六号証、原審における被控訴人本人尋問の結果」を、六行目の「助役に対し」(41頁2段8行目)の次に「昭和四六年九月一一日」を、七行目の「懲戒」(41頁2段10行目)の次に「処分」を加える。

44  同枚目裏二行目の「懲戒処分歴」(41頁2段22行目)の次に「及び弁論の全趣旨によって認められる被控訴人所属の国労の永年にわたる経営者側に対する闘争態度、殊に本件行為が当時の強力な民営化反対闘争を背景とした行為であること」を加える。

二  被控訴人の賃金(期末手当を含む。)請求権について

1  以上によれば、本件処分は無効であるから、被控訴人は控訴人に対し本件処分のあった日の翌日である昭和六一年九月二日から本判決確定日まで、労働契約に基づく賃金及び夏季、年末、年度末の各手当の支払請求権を有することになる。なお、本件処分に関係ない同年四月ないし八月分のベースアップ差額分二万一五〇〇円及び同年の夏季手当差額分七八二六円は被控訴人において受領済であることは当事者間に争いがない。本件処分当日の昭和六一年九月一日の賃金は、成立に争いのない(証拠略)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人において受領済と認められるから、当日分の賃金請求権は理由がない。

そして、弁論の全趣旨によれば、被控訴人は毎月二〇日に当月分の賃金の、毎年七月に夏季手当の、毎年一二月に年末手当の、毎年三月に年度末手当の各支払を受けていたものと認められるところ、本件処分当時の被控訴人の一か月当たりの賃金が二一万九六〇〇円(基本給の二〇万九六〇〇円と扶養手当の一万円を加えた額、これが後記期末手当の基準額になる。以下「賃金」というときは、この基準額たる賃金のことをいう。)、同年の年末手当が五三万八〇二〇円、年度末手当が八万三四四八円となる計算になることは当事者間に争いがない。したがって、被控訴人は控訴人に対して、昭和六一年九月二日から昭和六二年三月三一日までの賃金及び年末、年度末の各手当として合計二一五万一三四八円(計算式は、(二一万九六〇〇円(二九÷三〇+六)+五三万八〇二〇円+八万三四四八円=二一五万一三四八円)となる。)の支払を請求することができる。

2  控訴人は、昭和六二年度(同年四月一日)以降被控訴人は事業団本来の業務に従事する職員であったかどうかは明らかでなく、事業団の臨時業務である日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法に基づく再就職促進業務(事業団法二六条三項)に従事する職員となる可能性も十分にあったとして、前者であることを前提に賃金の請求をするのは不当であると主張するが、それは可能性に止まり、本件処分が無効である以上、その不利益を被控訴人に負担させるのは相当でない。したがって、本件処分当時と同様前者であることを前提に賃金請求権があるものと解するのが相当であるから、控訴人の右主張は採用できない。

3  さらに、控訴人は、期末手当については昭和六一年度夏季手当以降、労使間の協定により日常の勤務成績に応じて五パーセント増減できることとしたので、勤務成績の査定を受けていない被控訴人が当然にその支給率そのままの額の手当を受けられることにはならないと主張するが、本件処分により被控訴人は労務の提供ができなくなった結果右査定を受けられないことに帰したわけであるから、これを被控訴人の不利益に扱うのは相当でない。したがって、右協定を理由に昭和六一年度年末以降の各手当につき五パーセントの減額を認めるのも相当でないから、控訴人の右主張は採用できない。

4  次に、被控訴人は昭和六二年度以降一年で四号俸の定期昇給があることを前提に本件賃金請求をしており、弁論の全趣旨により成立を認める(証拠略)は右前提に沿う内容となっている。しかしながら、成立に争いのない(証拠略)(職員賃金基準規程)の三八条は「昇給所要期間は一年とし、その昇給は、別に定める場合を除き、四号俸とする。」と定めているが、右にいう「別に定める場合を除き、」という内容がどのようなものであるか明確でなく、これを認めるに足りる証拠はないから、右前提を肯認することはできない。したがって、被控訴人の昭和六一年度の基本給表である六 六七号俸(これは当事者間に争いがない。)を基準に昭和六二年度以降の被控訴人の本件賃金請求権の具体額を算定するのが相当である。

そうすると、ベースアップ分を考慮した一か月当たりの賃金は、控訴人が自認するとおり、昭和六二年度は二二万二六〇〇円、昭和六三年度は二二万八一〇〇円、平成元年度は二三万四九〇〇円が相当と認められる。

5  昭和六二年度の賃金について

右4の認定事実に、(証拠略)の全趣旨を合わせれば、昭和六二年度の被控訴人の夏季、年末、年度末の各手当はそれぞれ同年度の前記月額賃金二二万二六〇〇円の一・九か月分、二・五か月分、〇・二か月分と認められる。

以上の点を基に、被控訴人が控訴人に請求できる、同年度の賃金額を計算すると三六九万五一六〇円となる(計算式は、二二万二六〇〇円(一二+一・九+二・五+〇・二)=三六九万五一六〇円)。

6  昭和六三年度の賃金について

右4の認定事実に、(証拠略)の全趣旨を合わせれば、昭和六三年度の被控訴人の夏季、年末、年度末の各手当はそれぞれ同年度の前記月額賃金二二万八一〇〇円の一・九か月分、二・五か月分、〇・五か月分と認められる。

以上の点を基に、被控訴人が控訴人に請求できる、同年度の賃金額を計算すると三八五万四八九〇円となる(計算式は、二二万八一〇〇円(一二+一・九+二・五+〇・五)=三八五万四八九〇円)。

7  平成元年度の賃金について

右4の認定事実に、(証拠略)の全趣旨を合わせれば、昭和六三年度の被控訴人の夏季、年末の各手当はそれぞれ同年度の前記月額賃金二三万四九〇〇円の一・九か月分、二・五か月分と認められる。

以上の点を基に、被控訴人が控訴人に請求できる、被控訴人主張の平成元年四月一日から同年一二月三一日までの賃金額を計算すると三一四万七六六〇円となる(計算式は、二三万四九〇〇円(九+一・九+二・五)=三一四万七六六〇円)。

8  合計

以上を基に、昭和六一年九月二日から平成元年一二月三一日まで(したがって、主張期間に含まれない別表(1)記載の平成二年一月支給予定の追加特別手当は考慮しない。)の賃金額を計算すると一二八四万九〇五八円となる(計算式は、二一五万一三四八円+三六九万五一六〇円+三八五万四八九〇円+三一四万七六六〇円=一二八四万九〇五八円)。

三  以上の次第で、被控訴人の本訴請求は、被控訴人が控訴人に対し、労働契約上の地位にあることの確認を求める分並びに賃金(期末手当を含む。)請求権に基づき、昭和六一年九月二日から平成元年一二月三一日までの分として一二八四万九〇五八円及び平成二年一月一日から本判決確定日まで毎日二〇日限り一か月二三万四九〇〇円の割合による賃金の支払を求める限度で理由があるが、右を超える賃金支払請求分は失当として棄却を免れない。

よって、控訴人の本件控訴は理由がないからこれを棄却し、被控訴人の本件附帯控訴に基づき、被控訴人の控訴人に対する賃金支払請求分につき、右と異なる原判決主文第二、三項を右の趣旨に従って変更し、当審における訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条、九二条ただし書を、仮執行の宣言及びその免脱宣言につき同法一九六条一項及び三項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鎌田泰輝 裁判官 川畑耕平 裁判官 簑田孝行)

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